マスカレード

オペラ座の怪人』観てきました。
ミュージカルって苦手なんです。
なぜセリフの代わりに声を張り上げて歌うのか、とか
初対面のシーンでなぜハモれるんだろ、とか
余計なことをアレコレ考えてしまってストーリーに集中できないんです。
所々やっぱり納得はいかないんですが、思ったより感動しました。
スワロフスキー製のシャンデリアに灯りが燈されて
古びたオペラ座がかつての輝きを一気に取り戻すシーンは鳥肌。
そして流れてくるあの名曲にただ聞き惚れていました。
どこかでこんな感動を味わったことがある、とボンヤリ考えていて思い出したのは
何年か前に観たシルク・ド・ソレイユの『O』でした。
はっきりと自己主張された美しさではなく
何枚もの薄絹の向こうに揺らめいているような儚げな輝きを
息を殺して見守っている、そんな不確かなものを観客が共有している感じ。
頭の先から足のつま先まで飾り立てられた圧倒的な美ではなく
闇を得てこそ増す美しさ、影を纏ってこそ広がる艶やかさ。
劇中劇で繰り広げられる舞台の華やかさも
その合間に舞台裏が映し出されるからこそ虚飾の輝きを放つというもの。
クリスティーヌは暗い野望をその胸に一度も抱いたことはなかったのだろうか。
ファントムこそがそれを成し遂げて高みへと導いてくれる人物だということに
気付いても誘惑に駆られることはなかったのだろうか。
ラウルという光に照らされたクリスティーヌはファントムという闇を抱えて
美しくあり続けたのだろうか。
ラウルはクリスティーヌを得た後も勝利の味に酔いしれる夜は
なかったのかもしれない。


しばらくはあの曲が頭から離れません。