イチの怪我
いつもなら
スッと立ち上がってボールをコントロールするはずのイチが
スライディングしたままの体勢で
とりあえずボールをできるだけ遠くへ出して
そのあと膝のあたりを押さえて痛みに耐えている姿に
思わず両手を握りしめていた。
ピッチの外から治療をしていたスタッフが
ベンチに向かって『○』のサインを出したことを確認して安堵。
ほ。良かった。
ところがイチの様子がおかしい。
足がやっぱり痛いみたい。
慌てて交代の準備をする辻尾。
どうかどうか重傷ではありませんように。
後半のベンチへ姿を見せたイチに祈る。
そして検査結果が出た。
思ったよりも重傷じゃなくて少しだけ、ほ。
無理はしないで。
あ。でもできるだけ早く戻ってきて。
待ってるよ。
辻尾、あとを頼む。